
加藤元死刑囚の犯行に影響を受けた理由について青葉被告は、
「(加藤と同様に)自分も20歳を越えて仕事を転々とした。郵便局などの仕事をクビになった。そして加藤は事件を起こした。なんかしら共感、そういうなんか類似点じゃございませんが、人ごととは思えなかった」
と法廷で語っていた。子供のころに両親が離婚し、幼少期は「不遇だった」と述べていた。この点については判決でも、
「幼少期の虐待や派遣切り等の境遇が似ている秋葉原無差別殺傷事件の犯人にかねて共感していたものであるが、その共感もあって、大量殺人を選択したと考えられる」
としている。
第1スタジオ前の路地で10数分間
青葉被告は、犯行の3日前に埼玉から京都に入り、京アニ第1スタジオ周辺の下見を繰り返した。ガソリンやライターなどを買い、犯行に向けた準備を進めた。京アニのスタッフが最も多くいるであろう午前10時過ぎに第1スタジオ前に到着すると、一度、玄関のドアが開くかを確認した。
しかし、すぐに犯行には及ばなかった。
第1スタジオ前の路地で10数分間、青葉被告は考え込んだという。
「加藤被告も(犯行前に)考えている。やはりためらうものです」
「その時、頭抱えて、両手を額に持っていって考えた。その間に放火殺人をやろうかどうか考えた。やはりそれだけ大きなことを考える場合、単純にやるかでは済む問題ではない」
加藤元死刑囚は自身の著書「解」(批評社)で、
<頭では(トラックで)突っ込むつもりなのに、体がブレーキをかけた>
<思いとどまろうか>
とそのときの心境を吐露している。
だが、青葉被告は決行した。
「なんか自分の人生はあまりに暗い半生。一方、京都アニメーションは光の階段を上っている。小説も実らずパクられた」
「自分のような悪党でも、完全に良心がないかというと、そんなわけではない。良心の呵責(かしゃく)を抱えたままでしたことを、正直申し上げておきます」
検察側は第1スタジオ前の「10数分間のためらい」があったことを、
「青葉被告には計画性があり、妄想はない。完全責任能力を有する」
と有罪立証の大きな柱としていた。