(写真:佐賀県提供)

自分の人生の社長は自分「株式会社俺」の考え方

 宮坂さんは「生涯現役」という言葉も必ずしもポジティブには受け止められないという。

「生涯現役という時、一生プレーヤーとして働くみたいなニュアンスがあるじゃないですか。僕はたぶん向いていないと思います。でも、プライベートも含めた、生きることを楽しみ尽くすことに関しては生涯現役でいたい」

 宮坂さんには「株式会社俺」の考え方が根っこにある。自分の人生の社長は自分。その中に「仕事事業部」「アウトドア事業部」「友だち事業部」「家族事業部」……などがある。要は年齢や状況に応じて各事業部のウェートをどう配分していくか。「仕事事業部」一本だと、会社を辞めた瞬間に「株式会社俺」が消滅してしまう。だから、「老害」とささやかれてもポストにしがみついてしまう、というわけだ。

 自身にとっての花道とは、と宮坂さんに問うと、「役職に対しては全くこだわりがない」と言う。続けて、こんな意外な答えが返ってきた。

「僕が花道と聞いてイメージするのはお通夜です」

 天童荒太さんの著作『悼む人』に触発されたという。「誰に愛され、誰を愛し、どんなことをして人に感謝されたか」という人生のテーマが織り込まれた名著だ。

「お通夜はまさにそれが問われるシーン。だから、人生の花道はお通夜だと思うんです」

 宮坂さんは理想の通夜の場面をイラストに描いたことがある。米国へ向かう機内でふと自分のお通夜が思い浮かび、描き始めたら止まらなくなった。場所や出席してほしいメンバー、弁当のメニュー、音楽のプレイリスト……。気づけばノートに10枚ほどつづっていた。それがきっかけで、疎遠になっていた学生時代の友人ともコンタクトを取り始めたという。

「今の交友範囲のままだと、お通夜に来てくれる人が仕事の関係者に偏ってしまうと考えたからです。集まってくれた人に、『あいつはキャリアアップがうまいやつだった』とか言われるのは嫌じゃないですか」

 毎年正月、今年はどういう人との時間を多くとるかチューニングし直すという。

「惰性に流されると、仕事のウェートが増すばかりになります。意図的に仕事はここまで、としないと仕事に時間が吸い取られていきます」

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?
次のページ