「あいついいやつだった」友人がしのんでくれる人生
どういうことなのか。
民間企業は決算という形で短期間ごとに結果が出る。それはやっぱり面白い。一方で、仕事以外の人間関係や趣味の豊かさ、家族との関係を育むには数十年かかる。大事だけど、結果がなかなか出ないことは後回しにされやすい。だから、意図的に時間配分する必要がある。これも主体的に「株式会社俺」を経営していく秘訣の一つだという。
宮坂さんが「花道感がすごい」と感じるのは黒澤明監督の映画「生きる」のお通夜のシーン。主人公の市役所勤務の男性が胃がんであることを知り余命を悟った後、人が変わったように働き、お通夜で地域の人々に感謝される。心を打つ人間賛歌のストーリーだ。宮坂さんがしみじみ語る。
「自分の好きな友人知人がたくさんお通夜に来て、口々に『あいついいやつだったな』としのんでくれる。そう言われながら、棺の中にいるのっていいなと思うんです」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2024年1月29日号より抜粋