(写真:佐賀県提供)

「企業のトップに立つまでは出向や地方勤務も経験し、その都度、事業の立て直しを図るなど成果を出してきた点や、経営に携わってからも周囲に愛されながら、いざという時は確信を持って決断していく姿が頼もしく映りました」(柴田さん)

 佐賀県の山口祥義知事(58)も島耕作シリーズ全巻を読破するファン。「昭和、平成、令和の時代を人脈とアイデア、そして熱い情熱で乗り越えてこられた知見を活かしていただきたい」とエールを送る。

 島耕作副知事の佐賀県での任務はスポーツビジネスと半導体産業の情報発信。既に様々なオファーが舞い込んでいるという。

宮坂学(みやさか・まなぶ)/1967年生まれ、山口県出身。同志社大学卒。97年、設立2年目のヤフーに転職。2012年に44歳で代表取締役社長に抜擢される(撮影/編集部・渡辺豪)

 大手企業のトップ経験者が副知事に就くケースは現実にもある。すぐに浮かぶのがヤフーの社長、会長を務めた後、2019年に東京都副知事に転身した宮坂学さん(56)だ。宮坂さんは「副知事 島耕作」をどう受け止めたのか。

「面白い企画、やるなあと思いました」。そして、冗談っぽくこう続けた。「でも、僕の方が(島耕作よりも)先輩だよなって思いました」

 たしかに宮坂さんは現在、副知事5年目。その経験からビジネスエリートがキャリアチェンジする際の選択肢の一つとして「公務員」を念頭におくのは十分あり、だと感じているという。

「公務員の仕事の基本はケアだと思っています。対人的なヒアリングを重ねていろんな意味でケアをする。その仕事に、組織人として豊かな人間関係を築いてきた民間経験者が携わることには全く違和感がありません。働く寿命も延びたので、官民二つのキャリアをのぞいてみるのも面白いと思います」

 経済合理性がすべて、という価値観が席巻している社会で、パブリックな感覚を養えるのも貴重だ。民間企業も近年はCSR(社会的責任)を重視しているが、公的機関ではそれが本業。都庁では「100%、CSRをやっている感覚」だと話す。

「ヤフー時代は株主や顧客のためという意識で働いていたのが、今は世のため人のため、という粋な仕事ができている。それが一番の醍醐味です」

ワイルドな方を選ぶ「道草は人生を豊かに」

 企業ではトップを退任後、社内役員やアドバイザーといったポストに就く人も少なくない。しかし、大きな組織でリーダーシップを発揮できる人は、そのスキルを行政組織でも生かせる、と宮坂さんは唱える。「組織マネジメント」という点に関しては共通する点が多いからだ。転職面談で「どういう仕事ができますか」と問われ、「部長ならできます」と答えるシーンが、世間では中高年の求職者を揶揄する「ネタ」として扱われている。だが、部長職をしっかりこなしてきた自負のある人は「プロの部長だ」と胸を張っていい、と宮坂さんは言う。

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