元検事の落合洋司弁護士は、2022年に自民党麻生派の薗浦健太郎元衆院議員が政治資金パーティーの収入など約4900万円を記載しなかったとして政治資金規正法違反(虚偽記載など)で略式起訴となった事件を例に挙げてこう説明する。

「薗浦氏が4900万円もの不記載でも、裁判を開く必要はないと検察は判断した。それが、安倍派と二階派は裁判をやることになる。不記載が億単位の高額でかつ悪質性、常習性があるとみているからではないか。また、キックバックされたカネが裏金化されていたことも、重視しているのだと思う。政治資金収支報告書に記載がないというのは個人の利得で、本来なら税金がかかるのですから」

 二階派では、二階会長の秘書が略式起訴された後、二階氏が臨時の派閥総会を開き、

「派閥を解消したい」

 と表明した。二階派の国会議員がこう漏らす。

「うちはいつもうまく立ち回って主流派につくような派閥で、首相候補もいない。みんなあきらめムードで、派閥の解散でまとまるにはそう時間はかからないと思う」

記者会見する二階派の二階俊博会長(中央)や林幹雄会長代行(左)、武田良太事務総長=2024年1月19日、東京・平河町の砂防会館

5人衆にリーダーシップなし

 安倍派は、安倍晋三元首相亡き後、会長不在が続き、「5人衆」と呼ばれる萩生田光一前政調会長、松野博一前官房長官、世耕弘成前参院幹事長、西村康稔前経済産業相、高木毅前国対委員長ら幹部5人の集団指導体制だった。

 その5人衆がいずれも、パーティー収入のキックバックが露見した後、「被疑者」として特捜部から任意の事情聴取を受ける事態となった。

 安倍派も19日の夕方に臨時の派閥総会を開き、派閥解散の方針を決めた。

 安倍派の衆院議員はこう話す。

「事件が拡大する中で、派閥の解散やむなしという意見はあったが、会長がいないので決められない安倍派って感じでまったく話が進まなかった。5人衆は特捜部の事情聴取を受け、特に西村氏と世耕氏は『危ない』との噂が絶えなかったので、派閥対応がまったくできない状態。それどころか、臨時の派閥総会の日程もなかなか決まらなかった。正直、5人衆のリーダーシップのなさにはあきれるばかり。そこへ岸田首相が先手を打って自らの派閥を解散との方向を出した。安倍派は議員が立件されている。これで安倍派が存続というのはあり得なくなった」

清和政策研究会(安倍派)の総会で頭を下げる塩谷立座長(中央)、高木毅事務総長(右)、世耕弘成・前参院幹事長=2024年1月19日、東京・永田町
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麻生、二階両氏は派閥の長でなければ……