これを受けて林氏ら派閥幹部は、日付が変わっても電話対応に追われた。所属議員だけでなく、派閥に所属経験があった議員や落選中の元議員らにまで連絡し、理解を求めたという。

「岸田首相と昨年12月に話す機会があった。岸田派は安倍派などより、かなりきちんと政治資金の処理をしている。岸田首相は『細かいミスで会計責任者を責め立てるのもな。けど、ケジメはつけないと自民党の政権基盤が揺るぎかねない』と口にしていた。そのころから派閥解散を考えていたようだ」(前出・岸田派の国会議員)

「宏池会」(岸田派)は自民党の派閥の中で、まさに老舗だ。

 池田勇人元首相が設立した政策集団で、派閥から大平正芳、鈴木善幸、宮沢喜一が首相の座に就き、保守本流といわれた。ただ、2000年に、当時の派閥の長である加藤紘一・元党幹事長が野党の内閣不信任決議案に同調する「加藤の乱」を起こした前後に分裂して弱体化。岸田首相は宮沢の後、実に30年ぶりの宏池会からの首相となった。そして、派閥が解散すれば、岸田首相が最後の会長となる。

岸田首相は再選あきらめた?

 宏池会職員として働いた経験があり、自民党の政務調査役を長年務めた政治評論家の田村重信氏は、

「岸田首相は決めるときは相談もせず、思い切ってやる。それが派閥の解散だったのでしょう。私の聞いている情報だと、岸田首相を押し上げた麻生派の麻生太郎副総裁や茂木派の茂木敏充幹事長にも根回しをしなかったそうです。自民党総裁選は今年9月と迫っている。この2つの派閥の応援がないと岸田首相の再選はきわめて難しい。岸田首相は、再選されなくてもいい、自民党の派閥政治を終わらせるためにと、身を捨てて電撃的に派閥解散を決めたのだと思います。宏池会は伝統的に結束力が固いので、岸田首相が決めたなら従いますという所属議員が大半だったと聞いています。だから決断できたのでしょう」

 と話す。

自民党役員会に臨む岸田文雄首相(中央)、麻生太郎副総裁(右)、茂木敏充幹事長=2024年1月16日、東京・永田町の党本部

 追い込まれたのは、安倍派と二階派だ。

 東京地検特捜部は、岸田派の元会計責任者を「略式起訴」、つまり罰金刑を求める処分としたのに対し、政治資金収支報告書の不記載額が6億円超の安倍派の会計責任者と2億円超の二階派の元会計責任者を「在宅起訴」、つまり公判を請求する処分とした。在宅起訴された会計責任者らは、裁判で罪を問われ、公開の法廷で供述することとなる。岸田派よりはるかに厳しい処分といえる。

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二階派はあきらめムード