男性は大学卒業と同時に「航空管制官採用試験」を受け、一発で合格。その後、航空保安大学校で8カ月にわたる学科と技能研修を受け、地方の小さな空港に配属された。その後、大きな空港への異動も経験したが、数年前から働き始めた羽田空港について、こう語る。
「羽田はほかの空港と異なって、取り扱う便数が非常に多い。飛行機を詰まらせないように、常に“効率”が求められる」
羽田空港の管制塔には常に15人ほどがいて、それぞれ担当している滑走路を目視やレーダーで確認しながら業務にあたっている。
管制業務では、管制官からの指示を機長が聞き間違えたり、誤解したりすることがないように、指示は簡潔な英語でやり取りし、内容を機長が復唱することがルールになっている。
「飛行機が常に飛び交うなか、離着陸させていいのかを数秒で判断する必要があります。しかし、不要な復唱を繰り返すなど、本当にこちらの指示が伝わっているのか不安になるパイロットもいます」
管制官たちは、そんな問題のある飛行機を「要注意機体」として、確認の優先度を上げる必要がある。そんな機体に気を取られていると、別の場所で飛行機が接近しすぎたりして、ひやりとすることがあるという。
そんな緊張感がある現場で、年が明けたばかりの1月2日、大きな事故が起きた。
管制官は「マイクを持つのが怖い」
事故の現場は、羽田空港の海側にあるC滑走路。滑走路上にいた海上保安庁の航空機に、着陸した直後の日本航空の旅客機が後ろから突っ込み、海保機の5人が死傷した。
原因はまだ調査中だが、管制業務の中で空港から半径9キロ、高度900メートルの範囲を飛ぶ飛行機に離着陸の指示を出す「飛行場管制業務」で人的なミスが起きたと見られている。