その一方で、飛行機の運行をさばく管制官は減る傾向にある。
国家公務員である航空管制官になるには、国土交通省が実施する「航空管制官採用試験」に合格する必要があり、国によって定員が定められている。国交省の資料によると、定員は05年から18年連続で減少。05年には4985人だったが、23年は4134人になった。
国交省の担当者は、
「管制業務の人員数は大幅な減少ではなく、横ばいを維持しつつも減少傾向にある。もちろん管制官1人あたりの取り扱い機数が増えているのは把握している」
と認める。
「人がいれば事故は起きなかったのでは」
「政府による合理化政策で、管制官の人手不足が生まれている。管制官の判断をダブルチェックできるような人員が確保されていれば、今回の事故は起きなかったのではないでしょうか」
国土交通労働組合(国交労組)の担当者は、こう指摘する。
合理化政策とは、14年7月に閣議決定された「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」のことだ。
各省庁はこの方針に基づき、5年ごとに人員計画を立てる。国交省は20年に内閣人事局から出された通知を受けて、24年度までに6176人の人員削減が目標となっている。
しかし、「現場」の希望は正反対だ。国交労組の担当者は、
「現在、羽田空港では、1チーム12~13人の管制官がシフト交代制で勤務しています。管制塔内には15人ほどいなければいけなく、足りない2~3人は他のチームから応援という形で成り立っています。我々の計算では、安全体制を強化するためには新たに3人の管制官を6チーム作らなければならず、追加の人員が計18人必要です」
と訴える。
国交労組は14年から人員の増加を国交省に求めているものの、
「なんとか現場でがんばってくれ、の一点張り。21年度は6人の増員を要求したものの、結果は3人だけでした」
と担当者は明かす。
「管制官は常に多忙で、針の穴に糸を通すような世界でもある。なんとか現場がまわっている状況だが、絶対に人員を強化すべきだ」
(AERA dot.編集部・板垣聡旨)