ダシ感バクハツの「麺屋 扇 SEN」の塩らーめん(830円)と味付玉子(100円)。レアチャーシュー、炙りバラチャーシュー、穂先メンマ、ノリ、白髪ネギ、あさつき、味玉(筆者撮影)
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 日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、その店主が愛する一杯を紹介する本連載。今回は埼玉を代表する濃厚つけ麺の名店「狼煙 ~NOROSHI~」の店主・中村さんの愛する名店「麺屋 扇 SEN」をご紹介する。

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料理人経験ゼロ、32歳で飲食の世界へ

 JR川越線・西大宮駅から徒歩20分。大宮から県道2号さいたま春日部線を西にまっすぐ行ったロードサイドにぽつんとたたずむ一軒のラーメン店がある。「麺屋 扇 SEN」だ。2013年にオープンした塩ラーメンの人気店で、アクセスのいい場所ではないが、各地からファンが集まる。

麺屋 扇 SEN/埼玉県さいたま市西区指扇1085、木・土・日曜日11:00〜14:00、18:00〜21:00(ラストオーダー20:20)、 月・火・金曜日11:00〜14:00 。水曜定休。売り切れ次第閉店。詳細は店のX(@MenyaSen)で(筆者撮影)

 動物系に鮮魚のアラ、ムール貝のスープを合わせたトリプルスープ的な作り方で、凝りに凝った一杯。ダシ感バクハツのリッチなおいしさの塩ラーメンは絶品だ。

 店主の伊藤大自朗さんは東京都大田区蒲田で生まれる。父親の転勤の関係で戸塚に移り、小学校に入る頃には那須高原に引っ越した。高校まで那須高原で過ごすが、中学の頃には料理人になる夢を持っていた。

 東京に移って、そのまま大学を卒業。料理人を志そうと親に相談するが、許しをもらえず就職し、9年間は営業職に就いていた。

 結婚をし、西大宮にある妻の実家の居酒屋を継ぐ話が出てくる。ずっと料理人になりたかった伊藤さんにとってこれはチャンスだった。

 料理の修業をしようと飲食店の面接に行くが、十数社連続で落ちてしまった。当時伊藤さんは32歳。社会人経験はあったが、料理人経験の全くない伊藤さんの入れる店はなかなかなかった。

料理人経験ゼロで業界に飛び込んだ。原価率を無視して作った塩ラーメンをブレずに作り続け、今では「塩ラーメンといえば扇」といわれるほど地元で愛されているお店になった(筆者撮影)

 そんな中、中国料理やイタリアン、日本料理など多数の飲食店を運営する「際コーポレーション」に入社が決まる。しかし、高校を出たばかりの新入社員と同じ扱いで、皿洗いからのスタート。中国料理の店に4年間配属され、最後は責任者として店を任されるまでになった。

 料理と店の運営をある程度覚えたところで、お世辞にもアクセスが良いとはいえない西大宮で、遠くから人が呼べる食べ物は何かと考えた。そこで浮かんできたのがラーメンだった。

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「まねできない」塩ラーメン