鮮魚は近くの魚屋さんで仕入れ、日によって使うものが変わるという(筆者撮影)

「『塩ラーメンは難しい』といろんなところで言われています。塩は発酵食品ではないので、それだけではうまみが出ないのです。そこで、スープに魚介系を組み込むことにしました。近くの魚屋に白身魚のアラを取っておいてもらい、それをスープに使うことにしたんです」(伊藤さん)

 他ではなかなかまねのできない塩ラーメンを作ろうと、動物系と鮮魚、そしてムール貝を合わせたトリプルスープを作り出した。これが売れるラーメンかどうかは分からなかったが、とにかく自分が今食べたいラーメンを作ることに専念した。 

「麺屋 扇 SEN」の券売機。原価を無視した限定ラーメンがSNSで注目を集め、行列ができる店になった(筆者撮影)

 こうして2013年4月「麺屋 扇 SEN」はオープンした。店のある住所「指扇(さしおうぎ)」の「扇」を取って店名とした。

 しかし、初めからうまくはいかなかった。初日のお客さんはなんと7人だった。場所がよくない上に、意外と飲食店の周りの競争が激しく、近くには埼玉で一番行列のできるうどん店があった。

 ラーメン一杯では人は呼べなかったのである。

 このままでは店がつぶれてしまうと思い、伊藤さんは原価を無視した限定ラーメンでお客を集めることにした。今までの料理の経験を生かした限定ラーメンをいくつも開発し、メニューに加えていった。

「一度食べてもらえればリピーターになってもらえる自信はあったので、まず一度来てもらうことを第一に考えました。限定ラーメンを出し始めてからSNSで注目が集まり始め、行列ができるようになってからは軌道に乗っていったんです」(伊藤さん)

 宣伝や広告費には一切お金をかけず、コストはすべて食材に投入した。一度来たお客さんはどんどんリピーターになってくれた。しかし、限定ラーメンは出しながらも、あくまで看板メニューは塩ラーメンからブレることはなかった。しょうゆラーメンの方が圧倒的に愛されている業界の中で同じことをやってもしょうがないと思った伊藤さんは、店のイメージ付けをするために塩ラーメンにこだわり続けたのだ。

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