麺は細め角切りストレート。動物系に鮮魚のアラのスープ、ムール貝のスープを合わせる「トリプルスープ」的な作り方。この日の鮮魚アラは真鯛、クエ、ヒラメだった(筆者撮影)

「『塩ラーメン食いたいな。“扇”行くか』となるまで売れなくてもブレずに続けてきました。ギリギリ利益は出ているので、多少時間かかるのはしょうがないと考えていました」(伊藤さん)

 客層は近郊に住むお客さんが圧倒的で、しっかりと地元密着を実現している。妻の実家ということもあり、地元を本当に大事にしているという。

 ラーメンを作ることが大好きな伊藤さんは、今まで一度も嫌になったことがない。

「営業時間以外には仕込みをやっているので、朝7時から夜11時まで働いていますが、全く苦になりません。毎朝起きるとエネルギーがみなぎってくるんです。ラーメン屋は自分の天職だと思います。お金を稼ぐための割のいい仕事ではないと思いますし、この仕事は好きじゃないと続かないと思いますね」(伊藤さん)

 伊藤さんはいつ隣に他のラーメン屋が来ても差別化できるものを作ろうと、毎日自分の塩ラーメンをブラッシュアップしている。目標はあと20年続けること。歳とともに味覚も変わるので、緩やかにシフトチェンジしながら時代に合わせてラーメンを作っていく。細く長くが目標だ。

「麺屋 扇 SEN」店主の伊藤大自朗さん.。「毎朝起きるとエネルギーがみなぎってくる」と話し、ラーメン屋は天職だという(筆者撮影)

「自分が作らないと意味がないので店舗を広げる気もありません。作るのが楽しいからこの仕事をやっているんです。趣味が仕事ですから。売れることをするよりもダメになるようなことはせず、お店を少しでも長く続けていきたいと思っています」(伊藤さん)

 次回の記事では「麺屋 扇 SEN」の店主・伊藤さんの愛する名店をご紹介する。(ラーメンライター・井手隊長)

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