プレーした最後の年齢は33歳。トレード前のカージナルスでの成績を見る限り、まだまだ活躍が期待できただけに、いまだにトレード話がもとでフラッドがキャリアを棒に振ってしまったことを惜しむファンは多い。

 MLB機構を訴えた裁判については最高裁まで争ったものの、結果的にフラッドは敗訴となってしまった。だが、この戦いがのちの「ノートレード条項(リーグに10年以上所属し、5年間同一チームに所属した選手はトレードを拒否する権利)」の誕生につながり、さらには選手が移籍を望む球団と自由に交渉できる「フリーエージェント(FA)」の制度が生まれたことに一役買ったと言われている。

 近年でも通算3166安打を放ったエイドリアン・ベルトレ三塁手が、39歳にしてトレード要員として名前が挙がったが、当時所属していたレンジャーズの一員として引退したいとしてトレードを拒否している。人的補償は戦力均衡化などを目的としているため単純なトレード移籍と比べることはできないが、特にベテランや長年チームの顔としてプレーした選手にとって「どのチーム」でキャリアを終えるのかが重要なのは日米で変わらないのだろう。

 フラッドの例とはまた別物だが、自身の意思を突き通すために現役引退を決断したのがアダム・ラローシュ一塁手だ。

 主にブレーブスやナショナルズで長距離砲として活躍したラローシュは2014年のオフにシカゴ・ホワイトソックスと2年総額2500万ドル(約37億円)で契約。1年目のシーズンは127試合に出場して成績は下げたものの、翌年も新たなシーズンへ向けて春季キャンプでトレーニングをしていた。

 だがシーズン前に突然引退を決意する出来事が起こる。それは球団のケン・ウィリアムズ副社長がラローシュに「14歳の息子がクラブハウスの出入りすることを制限」したからだ。

 メジャーは日本とは違いクラブハウスに家族を連れてくるのは自然なことで、前年もラローシュはすべての試合で息子を帯同させていた。だが、2008年以来となるプレーオフ進出に向けてウィリアムズ副社長は、「選手たちにより野球に集中できる環境」を作り出したいと考え、ラローシュに息子の帯同を制限するよう伝えた。

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