しゅんさん(撮影/上田耕司)

次の紅白でもチャレンジしたい

 とはいえ、しゅんさんは年始はかなり落ち込んでいたという。

「1月3日くらいまで、ずっと部屋にいて、布団の中で引きこもっていました。でも『このままではいけない』と思って、家族やいろんな人と話すうちに、気が楽になった。現在は普通に仕事をしています」

 周囲からは「謝らなくていい」とさんざん言われた。

「でも、僕は謝らなくてはいけないと思っていて、チーム全員で挑戦しているからこそ、謝罪も必要な工程です。かといって、ずっと暗くしていてはみなさんに悪い印象を与えてしまうし、これからけん玉を始めようとする人がどんどん離れていってしまう。なので、きちんと謝る姿勢は示したうえで、活動を楽しく続けていくのが僕の使命だと思うようになりました」

 しゅんさんは「もしかめブラザーズ」を通じて、けん玉を広める活動をしている。東京・足立区の商店街で通行人に声をかけて一緒にけん玉をしたり、やったことがない人にけん玉の魅力を伝えたりしている。

「私はけん玉を始めてからまだ2年ですが、けん玉というツールがあることで、知らない人とでもどんどん仲良くなれるし、日々、新たな発見があります。けん玉は自分一人で完結することもできますが、誰かと一緒に練習することもできます。気軽に始められるし、いろんな人と出会えて、自分の居場所を持てるのはすごくいいところだと思います」

 そして、最後にこう締めくくった。

「紅白で落としたという事実とはこの1年間ずっと向き合っていくことになると思います。だからこそ、成功するまでは絶対に辞められない。次に挑戦するまでは、絶対にこの気持ちは変わりません。次の紅白で『けん玉チャレンジ』があるかはわかりませんが、あったらぜひ挑戦したいですね。成功したら気持ちが晴れるだろうし、もしまた失敗しても、僕が前向きにけん玉を楽しんでいる姿をみなさんに見ていただきたいです」

 次の紅白では、失敗から這い上がったしゅんさんのガッツポーズを見てみたい。

(AERA dot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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