紅白歌合戦当日のしゅんさん。「16番」のゼッケンが見える(画像=しゅんさん提供)

「なんか、ザワついているな」

 歴史にif(もしも)はないと言うが、予定通り、正式メンバーが出場していたら、しゅんさんの出番はなかった。人生、何が起こるかわからない。

 当日になって出場を告げられたしゅんさんは何を思ったのか。

「急に言われて、ドキッとはしたんですけど、僕はおととし出場していて、その時は成功したんですよ。だから、落とすかもしれないみたいな不安は全然なかったです。当然、成功するつもりでした」

 体調は万全。本番当日の練習にも参加して、あとは本番を待つのみだった。

「けん玉チャレンジ」が行われる三山ひろしの曲「どんこ坂~第7回けん玉世界記録への道~」が始まったのは午後10時過ぎ。「けん玉ヒーローズ」のメンバー128人がステージに上がっていく。10人目までなら1回だけなら失敗してもやり直しがきくというルールで、3番目の「パンサー」尾形貴弘が失敗。最初からやり直す場面があったが、尾形は2度目は成功させた。

 NHKホールの大観衆の前でけん玉が始まると、しゅんさんは徐々に緊張を感じるようになった。

「本番の時は、尾形さんが落とした場面は見られなくて、『あれっ、なんかザワついているな』と思っていたら、もう自分の番だみたいな感じで『あ、ヤバイ』と思いました」

 しゅんさんの位置は、平場ではなく、階段を数段上がった端っこ。けん玉がやりやすい場所には見えない。

「おととしも階段の位置で成功させた経験があるので、正直、自分の中では問題ありませんでした。運営の方も、事前に『もし不安要素があったら、やりやすい場所の番号と交換します』という対応をしてくれましたが、僕はそれは必要ないという認識でした」

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自分の心臓の鼓動が聞こえた