学生時代の女友だちが、取引先の男性をソープランドに連れていき、終わるのを待合室で待っていたことがあると話してくれたのは、2000年代に入ってからだ。女性議員がゼロの町議会議員の新年会で浴衣姿のコンパニオンがお酌をするのが当たり前だったというのを聞いたのは、平成後期の話。これは1990年代の話だが、地方議員の海外視察の際、空港に現地の女性が一人一人につき、夜の部屋も一緒だったことがあると証言してくれた女性議員がいた。有名ジャーナリストが、「○○議員(←超大物)にソープランドをおごってもらったことがある」と自慢気に話していたのを耳にしたという国会議員もいる。

 ちなみに、海外視察時に買春を拒否した議員は、その後、派閥の役職から外されたという。男性の中にも、性接待を好ましく思わない人もいるが、男性の“シモ”連帯に入らない男は男性でも男性社会から排除されるのである。男の“シモ”の連帯はかくも強い。

 それでも今回の世間の反応を見ていると、#MeToo以前とは隔世の感がある。女性を叩く声があればすぐに「それはセカンドレイプだ」と慎重な態度を求める声が目立つ。

 伊藤詩織さんが性被害を訴えたのは2015年だ。週刊誌が昨年末に報じた松本さんの性加害疑惑の年と同年である。詩織さんが2017年に記者会見を開いたときには、ブラウスのボタンが首まで閉じていなかったことを責める声が湧いたものだが、その年にハリウッドでの#MeTooがはじまり、日本では性被害当事者団体「スプリング」が発足し、2019年には性被害に抗議するフラワーデモがうまれ、2023年には「性的同意」という言葉が入った性犯罪刑法改正がなされた。この数年で、性を巡る言説は大きく変化したのだ。

 時代を変えるのは、「この国で女やっている」側の声なのだと思う。つくづく、そう思う。だからこそ、キモい、と感じる感性を封じてはいけない。そして「キモい」と言われることに、男たちは開き直ってはいけない。そして男たちの“シモ”の連帯の歴史を断ち切ってほしい。

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