大阪湾を埋め立ててつくられた、人工島の「夢洲」。この島で今、2025年4月開幕の「大阪・関西万博」に向け、急ピッチで工事が進む。だが、地震が起きた時の液状化や避難、土壌汚染など問題は山積みだ。AERA 2024年1月22日号より。
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大阪湾に浮かぶ人工島「夢洲(ゆめしま)」。昨年12月中旬、この島で建設中の大屋根(木造リング)に、視察のため上った大阪府の吉村洋文知事は「圧倒された」と何度も口にし、こう絶賛した。
「唯一無二の木造建築物になる」
2025年4月13日からの半年間、夢洲を会場に開かれる「大阪・関西万博」。開幕まで1年半を切り、工事は急ピッチで進む。だが、吉村知事の強い言葉とは裏腹に、前途は多難だ。海外パビリオンの建設が間に合わず、延期論が取り沙汰され、万博のPRを行う「アンバサダー」を務めているダウンタウンの松本人志氏の活動が休止の見通しとなるなど、異常事態に陥っている。それだけではない。大阪湾を埋め立てて造られた夢洲は、数々の問題が指摘されている。
まずは、地震だ。
災害リスクマネジメントが専門の立命館大学の高橋学特任教授は、「夢洲は『近畿トライアングル』と呼ばれる日本で最も活断層が多いエリア内にある」と指摘する。福井県の敦賀を頂点とし大阪湾、伊勢湾を結ぶ三角形のエリアを「近畿トライアングル」という。
「1995年の阪神・淡路大震災も2018年の大阪北部地震も、近畿トライアングル内の活断層が原因で起きています」(高橋特任教授)
夢洲で想定されている震度は、最大で6弱。耐震と、揺れに伴う液状化対策について、万博を主催する「日本国際博覧会協会(万博協会)」は、本誌の取材に「耐震対策は、建築基準法などの法令や基準に準じて設計している」(同協会整備局)と回答。液状化対策は、「土質調査の結果、『液状化をしない、または液状化しない可能性が大きい』となった事を踏まえ液状化対策は実施していません」(同)とした。これに、高橋特任教授は懸念を示す。
「夢洲はごみの焼却灰や浚渫土砂などで埋め立てた人工島なので、地盤が弱く、地震の際の液状化の危険性が極めて高いと言えます」