土壌汚染や地盤沈下も様々な問題に募る懸念

「おおさか市民ネットワーク」代表の藤永延代さんは、情報公開請求で集めた資料などから「夢洲には様々な問題がある」と指摘する。

「まずは土壌汚染です。万博会場となる夢洲2区に隣接する夢洲1区には、30年間でダイオキシンやPCB(ポリ塩化ビフェニール)など人体に有害な化学物質を含む推定860万トンの焼却灰が埋められています。その汚染された土壌に含まれる有害物質が、雨水と一緒に2区に流れ出ています」

 藤永さんによれば、1区内にはさらに、中程度汚染のPCBが含有された汚泥が入った袋が1万袋積まれたエリアがあり、今後その上を50センチの土で覆い、コンクリートで固め駐車場にする計画だという。土壌汚染対策について万博協会は、こう回答した。

「会場整備により発生する土砂は、土壌汚染対策法はじめ関係法令に従い対策を行うものであり、人体への影響はなく、安心してご来場いただけると考えています」(同協会整備局)

 だが、藤永さんは強い懸念を示す。

「PCBは国際法による禁止物質。そのような危ない物質の上に駐車場をつくったりして、世界から観光客を呼んでいいのでしょうか」

 次に藤永さんが問題だと指摘するのが「地盤沈下」だ。

「夢洲全体は、海底30メートルまでは軟弱な粘土層になっています。硬めの砂場程度と見られています」

 地盤沈下の心配はないのか。

 夢洲を管理する大阪港湾局に問うと、軟弱な粘土層は地盤改良工事によって地盤を固めたという。ただ、それでも今後、軟弱な粘土層の下にある硬い粘土層は年に数センチ沈下する。沈下が完全に止まるのは、「50年後にはほぼゼロになると想定している」(同局開発調整課)。藤永さんは批判する。

「そのような場所の上に、建築物をつくるのは論外。高層建造物など念頭になく、いくら地盤を改良して固めたからといって、危険です。そもそも夢洲は『負の遺産』などではありません。大阪市内から出る焼却灰や浚渫土砂などの最終処分場で市民の貴重な財産。わずか半年の万博のために多額の公金をつぎ込むのではなく、市民のための税金ですから、子どもや若者、シングルマザー対策など、市民のために使ってほしい」

(編集部・野村昌二)

AERA 2024年1月22日号より抜粋

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