AERA 2024年1月22日号より

災害時の対策や避難経路に問題

 地震による津波の心配もある。30年以内に70~80%の確率で発生するといわれる南海トラフ巨大地震は、震源が沖のため津波の危険性が指摘される。大阪府は、この巨大地震により大阪市内に押し寄せる津波は最大約5メートルと想定。夢洲の津波対策について万博協会は、「O.P.(大阪湾最低潮位)+4.5~5.7メートルであり、夢洲は想定津波高さ以上の地盤高さが確保されている」(同協会整備局)と説明する。だがこれにも、高橋特任教授は警鐘を鳴らす。

「津波の高さは、実際に地震が起きるまでわかりません。東日本大震災では、津波は最大38メートルの高さになりました。さらに、津波は一度ではなく繰り返し来ます。最初の津波で防波堤が壊れると、その後は直接海水が夢洲に流れ込むことも考えられます」

 18年9月に近畿地方に上陸した台風21号では、関西空港が一部水没し、埋立地の弱さが露呈した。

 高橋特任教授は、「一番の問題は災害時の避難経路だ」と強調する。

「夢洲に行くには鉄道とバスが主な交通手段ですが、地震が万博の開館時間に起きて停電になれば、鉄道が不通になり、多くの来場者は夢洲から逃げられなくなります。逃げ場を求め来館者が1カ所に集中すれば、転倒事故が起きることも考えられます。災害リスクから考えると、夢洲は最も危険な場所だと言えます」

 災害時の避難対策や避難経路はどうなっているのか。万博協会は、こう説明するにとどまった。

「地震等の大きな災害が発生した場合、周辺交通の状況等について情報収集を行うとともに、帰宅困難な方がいらっしゃる場合には、会場内の一部施設を開放するとともに、水や食料等の配布を行うことなどを検討しております」(同協会危機管理局)

 そもそも夢洲は、大阪市内で発生する産業廃棄物や建設残土、大阪湾の浚渫土砂の処分場として1977年から埋め立てが始まった。面積は約390ヘクタールで、甲子園球場約100個分。その造成した土地に住宅や商業施設が計画されたが、バブル崩壊で失速。長く「負の遺産」と呼ばれてきた。

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