手話狂言を鑑賞するため、国立能楽堂を訪問した秋篠宮妃紀子さま(左)と次女佳子さま=2015年2月1日、東京都渋谷区、代表撮影

 私たちが「手話」と呼ぶものには、「日本手話」と「日本語対応手話」の2通りがある。日本手話は、生まれつき聞こえない人や、幼少時に聞こえなくなった人が使っていることが多い。日本語対応手話は、日本語を取得した後に聞こえなくなった中途失聴の人や、少しは聞こえるという難聴者が使っていることが多いという。

 佳子さまが学ばれ、使われているのは、「日本語対応手話」だ。

コミュニケーションの力

 その場合の「上手」とはどういう点なのだろうか。小池さんは「コミュニケーションの力」と即答する。

「うちの社団法人にはろう者の俳優たちと付き合いが長い者もたくさんいて、手話が上手いとは、すなわち『コミュニケーションが上手い』ということだと話していました。

 例えば、手話の場合、2人で会話していたときに、どちらか一方の手話の能力が優れていたとしても、相手があまり手話のボキャブラリーを持っていなければ、コミュニケーションは成立しません。会話をつなぐのはコミュニケーション能力です」

 手話に限らず、私たちの会話でも、言葉の意味だけではなく、思いや意図が相手に伝わり、通じ合うということが肝要になる。

1カ月で哲学も語り合える

「手話の場合は特に、コミュニケーション力があるというのは大切で、その力がある人は『上手』ということになるのだと思います。

 理事長の黒柳が公演後の取材でも話していましたが、『アメリカのろう者の俳優から聞いたのだけれども、手話は違っても、ろう者同志であれば1週間で会話はできるようになり、コミュニケーションをとれる。1カ月もあれば哲学も語り合えるようになる』と。これは、黒柳がよく口にする言葉なんです。

 会話とは、伝えたいと思うことを伝え、相手の伝えたいことを理解するということ。伝えたいことを伝えるため、相手を理解するためには、コミュニケーションの力が必要になってくるのだと思います。黒柳は佳子さまのコミュニケーションの力を感じ取ったのではないでしょうか」

 佳子さまが今回鑑賞された手話狂言は、40年以上日本で上演され、世界各国でも「手話」という共通の言語で披露されているという。佳子さまは終了後に俳優らと懇談し、「とても良かったです」と手話で伝えられたそうだ。

 黒柳徹子さんの「上手」という言葉からは、佳子さまがこれまで聴覚障害者を支える活動に、熱心に取り組んできた努力が伝わってくる。(AERA dot.編集部・太田裕子)

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