「アリーナをきっかけにコミュニティーを広げ、たとえばマンションが建ったり、地価が上がったり、人口が増えたりといったグッドサイクルが街づくりに寄与する。何十年かけて地道にそうなればという理想を掲げていたら、自分たちだけでつくっちゃいました、と。まさにスーパーな話です」
長崎は21年にB3に参入した新興クラブ。毎年昇格という最短距離でトップカテゴリーに到達し、今季はB1で戦う。伊藤拓摩社長兼GMはこう言う。
「B3当時、平均入場者数は1500人程度で、B2の昨季は2千人ほど。少しずつ県内での認知度が上がっていってファンも増え、今季は全試合完売。選手は今や街中を歩けないくらい。長崎では新聞などでヴェルカを特集すると売り上げが倍になるとも聞きました」
県内でのヴェルカ人気は日の出の勢いだけに、収容人数が約1・5倍となる新アリーナへの期待は大きい。
「同じジャパネットHD傘下で、サッカーチームのV・ファーレン長崎のホームタウンは諫早市が中心。長崎市と少し離れていますが、サッカーの試合を見てからヴェルカの試合に来るという方もいます。長崎スタジアムシティができることによって、そうした人たちをもっと多く取り込めるという期待があります」(伊藤GM)
アリーナがもたらすのはファン人口の拡大に地域経済の活性化。ひいては日本バスケ界の底上げにつながる。
島田さんは決意を込めてこう語った。
「アリーナ構想をはじめ各クラブの経営努力が進み、お客さんも増えてきているところに、W杯での好結果という風が吹いた。正月と盆が一緒に来たようで、まさに昨年は飛躍の年。今後『B.革新』を経て、経営を常に第一にしながら競技レベルを上げ、日本代表の強化に資する、またアリーナを起爆剤にして地域創生に資するリーグにするという理想を追いかけていきたい」
(編集部・秦正理)
※AERA 2024年1月15日号より抜粋