作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。今回は大宮さんが伊沢拓司さんとの対談を振り返ります。
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伊沢くんは正直な人だった。気持ちいいくらい正直。「就職が、クイズ王ってこと? なかなかいないよね」と聞くと、そうなんです、と言いながら、だから大学院に行ったと教えてくれた。経済学部を卒業し、院を受けるも落ちて、受かったのが、農学部の院だったそう。
「もう研究もうまくいかないし、みたいなタイミングで、たまたまクイズ番組にレギュラーで出させていただいていて。それと学部のころに、すでに今やってるQuizKnockっていう事業を始めていたので、授業が疎かになっちゃったというか」
伊沢くんと話していて、この魅力はなんだろうなあと思いながら話を聞いていた。
「途中ね、本当に、校門をくぐるのすらできなくなっちゃって。怖くて」
意外と図太くないところがなんだか意外。
QuizKnockにはたくさんのスタッフがいるそうで、そして伊沢くんはきちんとスタッフのケアもしているという。私なんか、スタッフは2、3人だし、経営もできないし、事業拡大なんて脳はない。彼はきちんと経営者。ビジネスの話になるとそういう顔になる。でもそれが嫌じゃないのが不思議なのだ。
純粋で、お茶目で、それで頭の回転が速い経営者って、結構いるだろう。できる経営者の方ってお茶目だったり童心を忘れていなかったりするから。でも、その人たちとも違う何かが彼にはある。
クイズ番組の出演に関してこう言っていた。
「最初1、2年は、もう毎回こう、ガルルッみたいな(笑)、きょうはものにするぞみたいな気持ちで。シャーッて言って出てましたけど、クイズ王って呼ばれるようになったんですよ。おかげで、負けてもよくなったというか。結局、何に勝ったかとかは、みんな覚えてなくて、印象論の世界でしかないので、やっぱりレギュラー番組があるかどうか、すごい大事だなと思って」