篠山さんが撮影した「アサヒカメラ」2009年1月号の表紙

冷や汗が出た屋外ヌード撮影

 夜の東京・六本木。篠山さんほかモデル、スタッフ4人を乗せた白いワンボックスか―が首都高速の下をゆるゆると走っていく。

 最初の撮影地は湾岸エリアの公園。車を停めると篠山さんを先頭に松林の中をずんずん歩いていく。突然、目の前に芝生が広がり、その先にオレンジ色のライトに照らされた巨大なクレーンの群れと貨物船が飛び込んできた。

「どうです、いい場所でしょう」と、ご満悦だ。

 すぐにヌードのモデルを芝生の上に寝かせ、アシスタントがカメラをセットし、篠山さんが撮影を始める。ファインダーを覗きながらモデルに指示を出す。

「カメラを見ちゃダメ。うつぶせになって。そうそう。足をもう少し上げて。はい、オッケー」

 人が通りかかるとモデルにガウンをかけて撮影を中断し、通り過ぎると再開する。なかなか忙しい撮影である。

 次の現場はJR山手線・恵比寿駅近くの線路わきである。目の前を大勢のサラリーマンを乗せた電車が通り過ぎる。あまりにも至近距離のためか、電車の乗客のほとんどが撮影に気づいていないのがおかしい。

「デジカメで夜のヌードを撮り始めてから楽しくてしょうがない。10年ほど前に『TOKYO NUDE』(朝日新聞社)を撮ったときはものすごい騒ぎで。それを思うと今は夢のよう」

 当時はまだフィルム時代で、大勢のスタッフを動員して映画用ライトで照明するなど、かなり大がかりな撮影だったという。

「フィルム現像が上がるまで本当に写っているか、わからないからピリピリと緊張感があった。ところが今日なんか少人数でウキウキするもんね。夜を遊んじゃおうって感じ。デジカメの登場っていうのは、表現における規制緩和ですよ」

次のページ 「欲望を世の中が許してくれた」