タブロイド紙の“現場写真”
皇太子は昨年10月に単独でスペインに行きマドリードに滞在して、一人の女性と行動を共にした。当初は友人の男性が同行する予定だったが、新型コロナウイルス感染症にかかり急に行けなくなったという。女性は、メキシコ出身のソーシャライト、ジェノベバ・カサノバさん。皇太子より8歳年下で、テレビのリアリティー番組に顔を出すタレントだ。スペインの富豪の貴族と結婚したが、その後、離婚。以降、スペインの政治家や実業家らと浮名を流してきた。
カサノバさんと皇太子はピカソの展覧会を見て公園を散歩後、彼女のアパートで着替えて再び外出、フラメンコを見ながら夕食を楽しんだ。その後、夜遅くに彼女のアパートに戻り、翌朝皇太子が一人でアパートから出た。スペインのタブロイド紙が二人の行動を写真と共に暴露した。カサノバさんはすぐに全面的に否定している。王室からは今のところ声明などは出ていない。
圧倒的人気の皇太子妃
フレデリック皇太子とメアリー皇太子妃(51)は、00年、五輪に沸くシドニーのパブで出会った。妃はスコットランド出身の両親のもとオーストラリア・タスマニア州で生まれた。数学者の父親が教授として務めたタスマニア大学を卒業後、シドニーの広告会社エグゼクティブとして働いた。妃は当初、彼がデンマーク皇太子とは知らなかったという。交際が深まるとデンマークに移り、マイクロソフト社に就職。皇太子は「まるで皇太子妃になるために生まれたような方だ」と漏らしたとか。04年に結婚、双子を含む4人の子どもに恵まれた。
妃の好感度はきわめて高い。あっという間にデンマーク語をマスター、見事なスピーチを披露して国民の気持ちをつかんだ。メアリー財団を立ち上げ、いじめや孤独に苦しむ人へのサポートなどに力を尽くす。
順風満帆な夫妻だったのに、今回は思いがけないスキャンダルに見舞われた。浮気騒動が出た後の2人の公務では、メアリー妃は皇太子に視線を合わせず、「2人の間には緊張感が漂う」と書き立てられた。また妃がふと涙ぐむ瞬間もカメラは逃さなかった。
マルグレーテ女王の退位宣言はこのタイミングをとらえたものだった。国民に圧倒的な人気を誇るメアリー妃が離婚を申し出たりしたら、たちまち王室は崩壊する。そう見て取った女王の決断に迷いはなかった。息子の火遊びから王室が崩れ落ちないよう下したとも推察できる女王の決断は、称号剥奪に続いて、国民から「英断」と支持を受けている。
(ジャーナリスト・多賀幹子)
※AERAオンライン限定記事