「20〜59歳に適正な睡眠時間は6〜9時間。平均睡眠時間が6時間未満だと、死亡率が高まるというデータもあります。まずは最低でも、6時間以上の睡眠をとるようにしましょう。2週間以上、熟睡感が得られないなら医療機関を受診する目安です」(内村医師)
眠気の原因は「睡眠時無呼吸症候群」かも
この世代の安眠を妨げる大きな原因の一つは、睡眠時に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」です。「30~69歳の日本人の14%に当たる約940万人が中等症以上のSASと推定されています」と安達医師。睡眠中にいびきや無呼吸、呼吸の乱れが生じるSASは睡眠の質を大きく低下させてしまいます。
「SASは太っている人や首が太い男性に多いですが、顎(あご)が小さくてもなりやすく、やせた女性にもみられます。さらに、加齢による舌や顎の筋肉の衰えや骨格、アレルギー性疾患、鼻中隔弯曲症、副鼻腔炎も関係しているとされています」(安達医師)
SASは自覚しにくいため、ベッドパートナーの指摘で気づく場合がほとんどだそうです。自分で確認したい場合は、睡眠の状況や質が記録できる「ポケモンスリープ」などのスマートフォンアプリ、スマートウォッチ、センサーのついた寝具などが活用できます。
「SASで問題となるのは、睡眠の質の低下だけでなく、糖尿病、高血圧、動脈硬化、不整脈、心不全などのリスクも増加させるという点です。SASの治療は生活習慣病予防においてもプラスの影響が大きいので、まずはアプリなどを利用して発見してほしいと思います」(同)
SASの原因が肥満であれば、減量によって症状の改善が見込めます。専用のマウスピースの装着や横向き姿勢での就寝も、気道が確保され、空気の通りが楽になるため、症状緩和に効果が期待できるとされています。
睡眠の質を高めるには「朝」の過ごし方が鍵
多忙な働き世代は、思うように睡眠時間を取れない日も多いのではないでしょうか。限られた時間のなかでは睡眠の「質」を高めることが大切です。
「SASなど疾患の発見・治療をしたうえで、生活習慣、睡眠環境、嗜好品(しこうひん)のとり方を工夫することが、睡眠の質を高めるために重要です」(内村医師)