「眠りたいけれど寝る時間がない」「いつもなんとなく眠い」。「働き世代」の20代から50代は、睡眠時間の不足と昼間の眠気に悩まされがちです。パフォーマンスを維持するには、最低でも6時間以上の睡眠時間を確保して、さらにできるだけ「睡眠の質」を高めることが重要だそう。そのための注意点や改善法について、専門の医師に聞きました。
この記事は、週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「睡眠障害」全3回の2回目です。
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日本人の睡眠時間は先進国の中でも最低レベルとされ、質・量ともに改善が必要といわれています。なぜ、睡眠不足になってしまうのでしょうか。日本ではまだ数少ない睡眠専門施設である昭和大学病院東病院睡眠医療センター長の安達太郎医師は、働き世代の睡眠不足について、こう説明します。
「この世代での睡眠障害の主訴は“昼間の眠気”です。仕事や家事、プライベートなどに多忙であるがゆえに、睡眠不足になりやすい。睡眠はパフォーマンスを高め、健康を維持するためにも不可欠ですから、十分な睡眠時間の確保が必須です」
とくに、50代の日本人女性は、世界で最も睡眠時間が短いともいわれています。これについて、日本睡眠学会と、2023年に新設の日本睡眠協会、両方の理事長を務める久留米大学学長の内村直尚医師はこう説明します。
「50代の女性は公私ともに多忙で睡眠時間が削られやすく、睡眠不足になりやすい。加えて、閉経後の女性ホルモン低下や更年期障害から不眠傾向が強まりやすく、夜、眠りたくても眠れない人も増えます。女性が社会でもっと活躍していきやすくするためにも、まずは睡眠時間の確保、眠りやすい環境づくりが大前提です」
睡眠不足は昼間の眠気だけでなく、生活習慣病や認知症、がん、うつ病、自殺などのリスク、さらには死亡率も高めるといいます。こうした状況から、国も睡眠の重要性を再認識し、2014年には「健康づくりのための睡眠指針2014」(厚生労働省)を発表しています。