「碧の森」代表の湯浅静香さん
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 医薬品を過剰に摂取するオーバードーズ(OD)の、若者へのまん延が深刻化している。12月13日には東京都の小学校で女子児童2人が市販薬を過剰に摂取し、救急搬送された。だが、過去にODの沼にハマり身を滅ぼした経験を持つ女性は、ODの危険性に警鐘を鳴らしつつも「やめろとは言えないし、やめろと言うことに意味はない」と意外な本音を口にする。その真意とは。

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 埼玉県在住で、受刑者や、薬物などの依存症者の家族を支援する活動をしている「碧の森」代表の湯浅静香さん(43)。彼女自身が元受刑者で、窃盗容疑で逮捕された際の精神鑑定で、万引きや薬物、ギャンブルなどあらゆる依存症と診断された。

 幼少期に大人の男性から性被害を受け、母親による虐待とネグレクト(育児放棄)を経験した湯浅さんは、「クソみたいな人生だった」とその過去を一切隠さない。言葉通りに破天荒でもあり、自分で自分を痛めつけるような生活を送ってきた。

10代で違法薬物、18歳でODに

 10代で援助交際や違法薬物に走り、キャバクラで働いていた18歳のころからODに徐々に染まった。とはいえ、ODという言葉がまったく浸透していなかった時代。今思えばのODである。

 きっかけは、ただのノリだった。

 仕事が二部制で、深夜にいったん勤務を終え、別店舗に移って朝まで働くのだが、「疲れを飛ばすため」に何となく、二部に移る前に、とある薬に手を出した。

ギャル時代の湯浅さん(いずれも本人提供)

 酒を飲む仕事。いつの間にか意識が飛び、気がつくと、家の布団で寝ていた。

「めっちゃ怖いんだけど…」

 何も覚えていない湯浅さん。だが、その夜に出勤すると、同僚たちの反応は意外なものだった。

「昨日のノリ、最高だったよ! 楽しそうだったし、しゃべりも超良かった。いい仕事したよ!」

 予想外の“評価”に、恐怖心は消し飛び、“成功体験”に変わってしまった。

「仕事に活かせるって、本気で思ってしまったんです。バカだったなって今は思いますけどね」(湯浅さん)

 今よりルールの緩い時代。夜の世界で築いた人脈で、処方薬ですら簡単に入手できた。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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36歳で出所後、「依存症子」の名前で依存症者の家族の支援活動