「最初に手を出した薬の量がどんどん増えて、今度は別の薬にも手を出すようになって。いつの間にか、量も思い出せないほど、薬をぼりぼりと『食う』ような状態になっていきました」

 一時は店のナンバーワンまで昇りつめたが、成功体験は長続きしなかった。

 客相手に、言動が支離滅裂になり、時には記憶が飛んで約束を破ることが増えた。

 記憶が飛んだ時はキャラも変わった。明るいトークが売りだった湯浅さんだが、客にしなだれかかって甘えたりと、「女」を出すようになったという。

「お前、俺と付き合うって言っただろ?」(客)

「言ってないけど…」(湯浅さん)

 自分ではない自分になっていることに、湯浅さんは気づくことができない。愛想をつかした客がどんどん離れ、別の同僚を指名する。その様子に悔しさを感じるのだが、薬の量はどんどん増える。まさしく転落である。

懲役2年7カ月の実刑判決

「普通ならここで立ち止まるはずなのに、できなかった。なぜかって、今の若い子たちにも通じるかもしれませんが、薬局で売っていたりお医者さんが出す薬なんだから、体に悪いはずがないって思い込みがあったんです。当時は依存症の『依』の字も知らなかったし、ODなんて言葉もなかったはずで、知る術はありませんでした」

 26歳。落ちに落ちた湯浅さんは自殺未遂を起こし、病院に搬送された。そこで薬の大量服用の問題にやっと気づくのだが、行為をやめることはできなかった。

 いつしかODの影響で意識朦朧のまま万引きを繰り返すようになり、9年前、懲役2年7月の実刑判決を受け服役した。

 36歳で出所後、「依存症子」の名前で自らの半生を発信するとともに、「碧の森」を立ち上げ、受刑者や依存症者の家族の支援活動を続けている。ネイリストやキャリアコンサルタントの資格を取り、この秋からは通信制の大学に通い始めた。

 最近はODに関する相談が増えているという湯浅さん。若者たちにまん延している現状に何を思うのか。

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やめろって言っても、絶対に聞かない