「依存症子」の名前で支援活動をしている、湯浅静香さん(撮影/國府田英之)
「依存症子」の名前で支援活動をしている、湯浅静香さん(撮影/國府田英之)
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過去に万引きや薬物、ギャンブルなどの「依存症」と診断された元受刑者の女性が、顔と実名を出し、依存症者や家族を支援する活動を続けている。犯罪歴があることへの批判や中傷のリスクを承知で、なぜ表に出る決断をしたのか。女性が送った半生と、実名で活動する思いを聞いた。

【依存症を深めていた20代のギャル時代】

*  *  *
「あなたが繰り返してきた万引きや薬の大量服用、ギャンブルなどはすべて典型的な依存症です」

 精神科医からそう告げられたあと、大泣きしている自分に気が付いた。

「先生、私、どうしたらいいんですか?」

 埼玉県在住の湯浅静香さん(43)。依存症の情報を発信し、当事者やその家族の相談を受ける「碧の森」を運営する傍ら、「依存症子」の名前でブログや動画サイトを活用し、自らの体験を赤裸々に語っている。

 今でこそ髪形も服装もきれいに整え、ハキハキと話す湯浅さんだが、冒頭の涙のシーンは「毎日、向精神薬を大量に“食って”ボロボロだった」という8年前の出来事である。

 その数日前。湯浅さんは埼玉県内の商業施設にいた。向精神薬の影響で記憶は鮮明ではない。衣料品店に入ると、持っていたバッグに手当たり次第に服を詰めた。店員の視線も、防犯カメラが設置されているであろうこともぼんやり分かっていた。

 店外に商品を持ち出してから向かったのは、なぜか商業施設内の喫煙所だった。店から連絡を受けた警備員がやってきて、その後、駆けつけた警察官に現行犯逮捕された。

 万引きでの逮捕は3度目。バレバレの犯行だったが、逃げるわけでもない。しかも前回の逮捕からわずかな期間しかたっていなかった。

「また戻って来ちゃったの?」

 連れて行かれた警察署の担当刑事は驚いた。当局の判断で精神鑑定を受け、専門医から告げられたのが、「依存症」との診断だ。湯浅さんはその時を振り返る。

「なんで向精神薬をこんなに飲んでしまうのか。やめたいって毎日思うのに全然やめられない。万引きも、何を盗んだかも覚えていないし盗んだものを使ったことは一度もない。なのに盗った瞬間だけは『サイコー!』で、そのスリルを味わうことがやめられなかった。診察を受け、自分の不可解な行動は依存症という病気で、完治はしないけど回復はできると分かったこと。薬やギャンブルが止められないことに対して、散々『意志が弱い』と言われ続けてきたが、自分の意思の問題ではなかったということ。本当のことが分かりホッとして、気がついたら涙が出ていました」

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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援助交際に走ったギャル時代