第委員会の最終報告を受けて会見で謝罪する上崎勝規市長(中央)ら市幹部=2023年9月
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 ふるさと納税の申し込みが殺到する年末だが、ルール違反が発覚し、指定の取り消しとなり、制度から除外される自治体があることはご存じだろうか。兵庫県・淡路島の洲本市もその一つ。全国でも指折りの納税額を誇っていたが、返礼品の調達費の割合が3割を超える違反を犯し、昨年4月、総務省から2年間の“出禁”を受けた。ただ、その後の調べで、他にも次々と別の問題が発覚し、総務省にも虚偽の“公文書”を提出していた疑いが濃厚となった。洲本市の問題からは他の自治体にとっても参考となる課題が見えてくる。

【写真】ふるさと納税指定取り消し中の兵庫県洲本市 偽装文書を総務省に提出していたことが発覚し市民が告発

 ふるさと納税が欲しいがための高額な返礼品競争は全国的に過熱している。そのため、総務省は2019年に「返礼品は地場産品、調達費は寄付額の3割以下、経費の総額は5割以下」という新たな基準を設けたのだが、それに違反する自治体も出ていた。

 洲本市は、2020年度で約54億円、21年度で約78億円と多額の寄付を集めていたが、返礼品の割合が寄付額の3割を超えていることが判明し、総務省は昨年4月、ふるさと納税の制度の対象団体としての指定を取り消す、と発表した。

 総務省が指摘したのは「温泉利用券」だった。これは地元の温泉旅館で構成されている洲本温泉観光旅館連盟(旅館連盟)が発行しているものを市が仕入れ、返礼品という形にしていた。しかし、実際は市が券を印刷し、発行。1万円の温泉利用券が連盟の温泉施設で使われた場合、市は1万円を支払うという100%の“返礼率”であることが判明した。その後、市が10月に設置した第三者委員会の調査で、温泉利用券以外にも様々な違反が明らかになった。全返礼品1195品のうち127品が3割基準違反、221品が5割基準違反と認定されたのだ。

第三者委は市長、副市長らの「法令順守意識の低さ」指摘

 第三者委が今年9月に出した最終報告書から、洲本市のふるさと納税をめぐる主な問題点を整理しておく。

 動きの中心となるのは、ふるさと納税の担当課である魅力創生課の課長(退職)だ。この元課長の指揮の下、事業が強化され、寄付件数や額が増大したことで、市長ら幹部はこの元課長を評価。方針や手法は無条件に容認され、その結果、元課長に権限が集中した。担当部長ですら計画を把握できない状態になり、決裁は形骸化し、内部統制は機能不全だったという。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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