東京・調布市の閑静な住宅街で2020年10月18日、突然、道路が陥没して大きな穴が開いた。さらにその後、地中で3カ所の空洞が発見され、ニュースでも大きく報じられた。原因は、東京外郭環状道路(外環道)を造るために東日本高速道路(NEXCO東日本)が進めていた地下トンネルの工事だった。事故当時、記者は現地を訪れたが、3年2カ月ぶりに一帯を取材すると、移転をめぐって住民は分断され、一人のジャーナリストによって工事がストップしている現状がみえてきた。
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地下トンネル工事は、関越自動車道大泉ジャンクション(JCT)から東名高速道路までの約16キロを地下トンネルでつなぐという計画だが、陥没事故が起こる前から“いわくつき”の工事だった。
事故前の20年5月。住民らは大型掘削機のシールドマシンを使う工法は地盤沈下が起こると、工事の差し止めを求める仮処分を申し立てていた。そうしたなかで、同年10月に調布市で陥没事故が発生し、地下には複数の巨大な空洞が発見される事態となった。
事故を受けて、NEXCO東日本は、有識者による委員会を設置して原因を調査。20年12月、有識者委員会は報告書を出し、「特殊な地盤条件下で行われたシールドトンネルの施工が、陥没地点を含む空洞の要因の一つである可能性が高い」と陥没と工事の因果関係を認めた。