陥没があった道路の今の様子。写真の道路左側は買い取り対象になった(撮影/上田耕司)

Aさんの家が穴に落ちる危険

 一方、東京地裁は22年2月、陥没した地域を含む約9キロの区間で工事差し止めを命じる決定をしたが、それ以外の約7キロの区間は住民側の申請を棄却。今年7月、最高裁も住民側の特別抗告を棄却した。

「東京外環道訴訟を支える会」のメンバーは実情をこう話す。

「東京地裁が仮処分決定した、9キロの区間の工事差し止めはいまだに有効で、工事はストップしています。NEXCO東日本側は今のところ不服申し立てはしていません」

 仮処分を申し立てた原告の一人にジャーナリストのA さんがいる。現在、このAさんが工事をストップさせている“キーマン”になっているという。

「仮処分の決定では、Aさんの家が“要”になっているんです。というのは工事差し止めの仮処分の申し立てをした原告13人のうち、原告適格をみとめられたのはAさんだけ。これ以上の工事をすると、Aさんの家が穴に落ちる可能性があり危険だという理由で、9キロ区間で工事が差し止められたのです。他の原告住民の訴えは認められなかったが、Aさんの主張だけが認められた格好です」(前出の「支える会」のメンバー)

 Aさんは大手メディアに勤務していた経験があり、ジャーナリストとして著書もある。Aさんの家は築40年以上で2階建ての一軒家。Aさんに話を聞くと、こう見解を話す。

「私だけ主張が認められたというよりも、私以外の近所の人は訴訟の原告にはなっていないというだけの話です。工事を再開すれば、この辺の住民がみんな危ないのは一緒なんです。もし住民側からの申請をすべて却下したら、万が一、次に陥没があった際に裁判所の責任も問われかねない。そうなると困るので、裁判官は一部区間だけを差し止めたんでしょう」

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