「私は動かない」と拒否している家も
NEXCO東日本に買い取りの基準について問い合わせるとこう回答した。
「地盤補修範囲の仮移転・買い取りの対象は30軒です。地盤補修範囲については、21年3月の有識者委員会報告書に基づき、トンネル坑内から行った調査結果を踏まえ、トンネルの真上の約220メートルを、有識者に確認のうえで特定したところです」
回答にある30軒以外にも、買い取り対象の家が10軒くらいあると報じられていることを問うと、
「周辺住民の方々への影響を極力低減しながら、より安全に、早期に、地盤補修を行うため、周辺住民の方へ、資機材ヤードや発生土の仮置き場等に必要な工事用地の提供をお願いしています。対象軒数等については、個人情報に関わるため回答は控えさせていただきます」
と明確な答えは返ってこなかった。
前出の「支える会」のメンバーは移転の実情をこう話す。
「移転対象になっていてもこの3年の間に孤独死した方もいます。その一方、買い取りルートに入っていても、『私は動かない』と拒否し続けている家も、私の知る限りでは2、3軒あります。NEXCO東日本は地盤補修のパイプラインを通すのに、そういう家を避けて、横にずらして通す計画にする予定だと聞いています」
陥没や健康への被害を受けたうえに、地域社会まで分断されてしまった住民たち。こうした状況を解消し、住民が一日でも早く平穏な生活が取り戻せるように、事業者は誠意ある対応をすべきだろう。
(AERA dot.編集部・上田耕司)