自宅の隣に工事のパイプラインが通り、騒音や低周波に悩まされる住民もいる(撮影/上田耕司)

NEXCO東日本から買い取りの話が…

 前述のように、9キロ区間周辺にAさんの家があることで工事がストップしていることから、今後の工事の行方は、Aさんの対応によるところが大きい。住民運動グループ「外環ネット」のメンバーは心配そうにこう話す。

「今年9月、突然、AさんにNEXCO東日本の担当者から『買い取りのための調査をしたい』という打診があったようです。築40年以上の家でも、『新築くらいのお金は出します』『土地代、引っ越し代も出します』と口説いたそうです。もしも、Aさんが承諾し、家を売却してしまったら、止まっていた工事が一気に動きだしてしまう」

 Aさんにそのことを問うと、NEXCO東日本から買い取りの話が来ていることは認めた。

 確かに、NEXCO東日本も工事をこのまま止めているわけにはいかない。何とかしてAさんを懐柔しようということだろう。

「このままずっと工事が止まってしまうと、重機のリース代や人件費がかさんでしまう。NEXCO東日本はまずは仮処分申請で棄却された部分から補修工事を進めていますが、基本的に、仮処分の申請が取り下げられない限り、地下トンネルはいつまでたっても造れません。Aさんを落としたほうが、早くて安上がりだという腹なのでしょう」(前出・外環ネットメンバー)

 Aさんは住民側とNEXCO東日本側との板挟みになっている状態だ。前出の「支える会」のメンバーはこう話す。

「彼が事業者と“取引”をすれば、地下トンネルは開通に向かって一気に進んでしまう。何のために仮処分の訴えをして、地裁の決定を勝ち取ったのかわからなくなってしまう」

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あいまいな「買い取り基準」