「熱い司馬ファン、手弁当で集まる人たちに会うのが楽しくて続けてきましたが、23年の生誕100年は大きな節目だと思ってました。今後も菜の花忌が続くためにも、少しは余力のあるうちにバトンタッチできたらと思い、24年を最後に決めました」
今回のテーマ『街道をゆく』は、古屋さんにとってなじみが深い。
「NHKスペシャルで『街道をゆく』を12回放送したときは俳優の田村高廣さんが朗読を担当され、その後残された『街道』を48回放送したときは私が担当しました。最初は田村さんを意識して声を張りましたが、ディレクターたちが調整室で首を傾げている。司馬さんの『街道』はひとりひとりに語りかけるように書かれたんじゃないかとアドバイスを受け、いつもより声を抑え気味に、囁くように語ったのを覚えています。ひとつの『街道』につき6回ぐらい読みましたね」
いざやめることを決めると、寂しい気持ちにもなるという。
「一年の間、いつも菜の花忌のことを考えてきましたからね。最後に読むものはだいたい決めています。日本の政治や経済、皆さんの暮らしが混沌としているなか、おそらくいま司馬さんがいれば、それでもなんらかの形で我々を励ましてくれただろう。司馬さんの文章は明るさがあります。そうした励ましの思いをこめた文章を読むつもりです」
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第27回菜の花忌シンポジウム「『街道をゆく』――過去から未来へ」。パネリストは磯田道史(国際日本文化研究センター教授)、今村翔吾(作家)、岸本葉子(エッセイスト)の各氏。【日時】2024年2月12日(月・振替休日)13時から16時(開場12時)【場所】文京シビックホール(東京都文京区)【参加費】1000円(当日会場で)【申し込み方法】往復はがき(1名で1枚)に、住所、氏名、電話番号を記入し、司馬遼太郎記念財団事務局まで。〒577-0803 大阪府東大阪市下小阪3丁目11番18号 応募者多数の場合は抽選。締め切りは2024年1月10日(水)(消印有効)