ジュンク堂書店池袋本店9階「ふるさとの棚」の北海道コーナー。定番の旅行書のほか、エッセイなども(撮影:高鍬真之)
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 新型コロナ明け初めての正月。控えていた帰省を考えている読者は多いだろう。そこで地域に根差して出版活動をしている地方出版社の本を47都道府県ごとに紹介する。AERA 2024年1月1-8日合併号より。

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 東京・池袋のジュンク堂書店池袋本店9階。特設コーナー「ふるさとの棚」には、北海道から沖縄まで47都道府県で地方色豊かな本を発行している地方出版社の作品がずらりと並んでいる。

 その数、ざっと4500冊。これほど揃えたコーナーを持つ書店は他になく、読書人にとって聖地中の聖地。東京出張のたびに足を運ぶ地方在住のファンも少なくない。

「その地域ならではの視点や資料を用いた書籍ばかりで、土地土地の息吹を感じられます。2023年はNHK連続テレビ小説『らんまん』のモデルになった牧野富太郎氏関連や発災100年だった関東大震災にまつわる書籍が比較的動いていましたね」(同店・森暁子(さとこ)副店長)

 この「ふるさとの棚」を支えているのが東京都新宿区に本社を構える地方・小出版流通センターだ。地方出版社と社員数人の小規模出版社の書籍や雑誌を専門に扱う取次会社である。

「取引先企業は約1100社。出版不況により作品が絞られて10年ほど前に比べて500点ほど減ってはいますが、今でも取扱点数は年間3千点を超えています」(同社・川上賢一社長)

ご当地ならではの魅力

 両社への取材と、地方出版社の作品限定のコンテスト「ブックインとっとり・地方出版文化功労賞」(主催・ブックインとっとり実行委員会、共催・鳥取県図書館協会ほか)の受賞作を参考にして選んだ。点数が多いので、さらに4作に絞って紹介したい。

 23年に36回目を迎えたブックインとっとり・地方出版文化功労賞は、最優秀賞である地方出版文化功労賞の該当作はなかったが、奨励賞に『小学生が描いた昭和の日本 児童画五〇〇点 自転車こいで全国から』(編著/鈴木浩、発行/石風社)と『CAFE´ モンタン』(編・制作/萬鉄五郎記念美術館ほか、発行/杜陵高速印刷出版部)の2作。そして特別賞に『鹿児島 錫山鉱山遺構目録』(著・写真/志賀美英、発行/南日本新聞開発センター)が選ばれた。

「作品の質は当然ですが、資料性や出版社が出す意義なども考慮して受賞作を決めております。著者へのリスペクトはもちろんのこと、それを世に出す一歩を共に歩む出版社の背中を押すために行っている面もあります」(実行委員長・中川玄洋氏)

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