そうなると、池田氏のキックバック分も「二重帳簿」となりかねない。今後の捜査について、元東京地検の落合洋司弁護士は、

「派閥が二重帳簿をつけていたとなれば、パソコンや携帯電話を押収する。それが強制捜査です。河井夫妻の事件で、私は、カネをもらった側、広島の地方議員に選任されて弁護をしましたが、あの時も押収したパソコンや携帯電話が重要な証拠になった。河井夫妻がカネを配った一覧表などがパソコンから出てきて、携帯電話の位置情報などでより補強されて立件となりました。今回も、特捜部は二重帳簿やキックバック不記載の経緯、指示、承諾などをパソコン、携帯電話などからさらに詰めていこうとしているのではないでしょうか」

 との見方を示す。

「特捜部の調べを受けた際に携帯電話の情報を任意提出した」

 とAERA dot.の取材に話す安倍派の議員秘書もいた。

カネの流れ、帰属をどこまで特捜部が立証できるか

 特捜部は、安倍元首相の「桜を見る会」では強制捜査をせずに秘書らだけを略式起訴としたのは記憶に新しい。だが、今回は状況が大きく違う。

「桜を見る会」をめぐる問題について審議された衆院予算委で答弁する安倍晋三首相(当時)=2020年2月

 落合弁護士は、

「特捜部は派閥の事務総長クラスの幹部をやるか、無理ならキックバックの金額が大きい上位3人とか5人を立件するか、今後はどちらかに絞ってくるはず。金額が大きい池田氏はターゲットになるはずです。ただ、キックバックのカネがどの政治団体で処理されるはずだったのかがポイントです。カネの流れ、帰属をどこまで特捜部が立証できるかでしょう。安倍元首相の『桜を見る会』は大騒ぎされたが強制捜査をせず、検察は最初から小さく収めるつもりだったはずです。今回、ガサに踏み切ったというのは、議員バッジを取るくらいの覚悟だとみられます。安倍派の事務総長クラスが立件となれば略式起訴では済まず、裁判になる可能性が大きいです。ここまで大きくなって、『桜を見る会』のように秘書だけの立件では世論がおさまらないでしょう」

 と話している。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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