梅津理恵さん=東北大学金属材料研究所

ハーフメタルの原理究明を

――そんな忙しい生活をしていたころに、日本金属学会から論文賞をもらっているんですね。東北大の中の多元物質科学研究所に移ってからポンポンポンと賞を受けた。

 あ~、いま思えば、指導教官によく指導していただきました。「論文数で負けるな」と言われて、学生のころから書くように仕向けられた。研究室全体がそういう雰囲気でした。

――金研に移ったのは2010年ですね。

 6年間のプロジェクトの専任研究員のような形で入りました。その間に、科学技術振興機構(JST)のさきがけ研究者になれたことで、自分のやりたい研究ができた。さきがけというのは若い人に自由な発想で自由に研究させるという趣旨のプログラムです。

 私が採択された領域の総括は非常に有名なすごい先生で、チョー怖くて(笑)。すごい怒られるんです。「もっと自分の独自性を出せ」とか「もっと将来に向かったことに挑戦せい」とか。それで私は放射光(特殊な光を出す大型施設)実験をやろうと思った。いい試料をつくって、放射光実験を始めましたっていうところでさきがけの期間の3年は終わっちゃったんですけど、その後も実験を続けて、ある手法でハーフメタルの電子状態を直接観測するという世界初の成果を上げることができた。

 それに、上が厳しかったおかげで、さきがけのメンバーはすごく結束が固くなって仲良くなった(笑)。私は3期生でしたけど、2期生、1期生を含めて、いま思えばすごい人が集まっていた。その後、それぞれの分野を引っ張っているような人たちがたくさんいます。

――実験は、兵庫県にある大型放射光施設「スプリング8(SPring-8)」でやったんですね。東北大にも最新の放射光施設「ナノテラス(Nano Terasu)」ができるところですね。

 はい、ここで実験できるのがすごく楽しみです。ハーフメタルをはじめとする機能性材料が、なぜそういう性質を持ちえたのかの原理をそこで証明したいと思っています。

長男は「研究者になりたい」

――いま、お子さんたちは?

 上の2人は看護師を目指しています。長く続けられる仕事がいいんじゃないと言ったら、手に職をと思ったらしくて。高校生男子は、とりあえずサッカー選手は諦めたみたいで(笑)。いまは「研究者になりたい」って言ってますね。何でって聞いたら、「一番身近に研究者っぽくない人がいる」って。

――え、どういうこと?

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