無料でウェブニュースを読むことは、わたしたちの暮らしの一部となりつつある。スマホやパソコンでニュースを見ない日はないし「ねぇアレ見た?」と言えば、それが会話の糸口にもなる。今やウェブニュースはコミュニケーションツールだ。
 しかし、この世の中「タダより高いものはない」のである。著者は無料のウェブニュースを真に受けるのは“バカ”だと喝破し、「あなたは今後も“バカ”であり続けるのか。それとも“バカ”をやめて自分の力で情報を読み解く方法を身に付けるのか」と問いかける。バカから脱出したければ本書を読むべし、というワケだ。
 本書が特徴的なのは、なんといっても著者が今現在ニュースサイトの「中の人」として働いていることだ。現場の人間が暴露する裏事情は、かなり生臭い。閲覧数を稼いだり、ニュースと広告の境目を曖昧にするため日々磨かれるテクニックの数々は、報道のためではなく、われわれを騙すためのテクニックである(しかも感心してしまうほど狡猾!)。電波法に基づく免許取得を必要とするテレビ放送と違い「ウェブニュースサイトを運営するために免許は必要ない」、つまり野放しである。だから企業や代理店からもたらされる広告費に目が眩んだ者たちが簡単にダークサイドへと堕ちてゆく。
 ステルスマーケティング=「ユーザーに分からないように宣伝活動を行うことで、さも『本当に』その商品の価値が高いように見せかける手法」について書かれている第五章では「まじめな編集」「ビジネスライクな編集」といった、みんながステマに手を染めてしまう事例紹介がリアルすぎてちょっと怖い。しかしこの「ゾッとする感じ」を植え付けることこそが著者の狙いであろう。おかしな方向へ進んでいるウェブニュースを徹底批判し、ニュース=報道のあるべき姿を取り戻すための「革命の書」として本書は読まれるべきである。

週刊朝日 2015年7月10日号