入塾当初は受講生も少なく、クラスも一つだけだった。下の子の入塾も検討しようと小学2年生の頃に体験を申し込むと長女の時と様子が違った。驚いたのは人数の増え具合だ。小2の夏期講習の段階ですでに3クラスができていた。

 大手中学受験塾の場合、入塾するにもテストを受ける必要がある。ところが中学受験が過熱し、この「入塾テストで落ちる」という状況が生まれているのだ。しかし、すでに入っている生徒を追い出すことはほぼないため、席にゆとりのある低学年の段階で入塾させる家庭が増えた。

「この数年の間にも低年齢化の加速を感じました」(女性)

 しかし、中学受験を扱う塾がエリアに数えるほどしかないという地方に比べ、主要駅の駅前にはいくつもの塾が並ぶ東京、しかも少子化の今、なぜこのような現象が起こるのか。ここにはからくりが潜んでいる。

ガチ勢は校舎も選ぶ

 中学受験が人気なのは事実だが、塾に「入れない」というのは実は一部の塾の校舎だけの話。人気の高い校舎には実力のある講師がそろうため、偏差値上位校を目指すガチ受験の家庭をはじめとする一部の層では塾名だけでなく校舎でも塾を選んでいる。そのため、こうした校舎では小学3年の2月の前にすでに満席という状況が起きるのだ。

 前出の元塾関係者はこう話す。

「塾には大学生で経験も実力もまだまだの講師から、プロフェッショナルの講師までいろいろいます。講師もランク分けされているんです。私のいた塾でも成績の高い子が集まる校舎には、優秀な講師を配置していました」

 かくして入りやすい低学年からお目当ての校舎に入塾させるという状況が生まれ、入塾時期の低年齢化が加速しているのだ。(フリーランス記者・宮本さおり)

AERA 2023年12月11日号より抜粋