都心を中心に中学受験の低年齢化が進み、大手塾の人気校舎では小1や小2で「満席」のため入れないケースもあるという(撮影/写真映像部・馬場岳人)

 中学受験の激化を受けて、都心部では塾通いの低年齢化も加速している。「小3の2月」に始まる中学受験コースからの入塾を前に満席というケースもあるという。少子化の今、なぜこのような現象が起こるのか。AERA 2023年12月11日号より。

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 コロナ禍で私立中学のサポートの手厚さが見直され、志願者が増えた昨年度の中学入試。一方、東京都を中心とする1都3県では少子化の波が押し寄せ、今年度は昨年と比べ小学6年生の人口が5千人以上減少することから志願者数は減る見込みだ。だが、受験率は昨年同様となるだろうというのが大方の専門家の見立てだ。そんな中、少子化の影響により塾では熾烈(しれつ)な生徒獲得争いが勃発している。

「低学年から塾に足を運んでもらうために、習い事感覚で通えるプログラムを用意しています」

 と話すのは、大手塾で経営戦略立案の経験を持つ人物だ。実験教室や英会話など楽しそうなプログラムを売りに、将来顧客となりそうな低学年層を早くから取り囲もうというのが狙いだ。

「まずはこうやって子どもに塾の場所に慣れてもらって、一定の学年になったら受験コースに誘うんです」

入塾テストで落ちる

 この傾向はなにも都市部だけの話ではないようだ。静岡県で3人の子を育てる40代の母親のエリアでも、中学受験コースのある塾では、低学年向けに英語の歌や、歴史すごろくなど、ゲーム感覚で楽しむクラスが開校されているという。

 長男は受験クラスにあたる本科コースから入塾したが、下の子は低学年からでも入れるゲームのコースから入塾した。

「うちの子の場合、楽しそうではあったけど、その後の勉強に役立っているかというと、実りはなかった気がします」

 一方、都心では「小3の2月」に始まる中学受験コースからの入塾が難しいという噂が流れ、低学年で入塾する家庭が増えている。今年中学に上がった娘と小学4年生の息子を持つ都内在住の40代の会社員女性は、数年で中学受験の過熱ぶりの違いを確かに感じるという。

 周りには小学1年生から塾に通わせる家庭もあった。だが、女性は「何がなんでも中学受験!」という気はなかったため、長女は小3の秋に入塾。

「公立中でもいいと思っていましたが、もし本人が中学受験をしたいと言い出した時に、手遅れだったとならないために入塾しておこうと思ったんです」

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