岸田文雄首相

 消費者から見ると、ガソリンが1リットル25.1円も安くなるので、嬉しい話だが、一方で、この税収がなくなると、国と地方合わせて、年間約1兆5千億円も歳入が減るので、その穴埋めをどうするかということになる。

 元々は、ガソリン価格抑制のために実施されている石油元売り会社などへの補助金(激変緩和措置)の代わりにトリガー条項を発動せよという提案を国民民主党が今年の通常国会で今年度予算案審議の際に持ち出した。岸田首相が、これを検討すると言ったので、この時も国民民主党は予算案に賛成したのだが、実際には、検討とは名ばかりで、凍結解除は実現しなかったという経緯がある。今回は2度目なので、再び検討だけで終わりとはさすがにできないと考えるのが普通だろう。

 しかし、本当に実行すれば大規模な歳入減少になる。自民党議員から見れば、自分たちの利権削減につながりかねない歳入削減の話はとんでもないことだ。

 例えば、防衛費財源確保のために増税するのがいつになるのかという機微な議論にも絡むので、今頃何を考えているのだと、自民・公明両党の税制調査会だけでなく、防衛族も怒り心頭だろう。

 また、子育て支援の財源も不足しているし、さらに所得減税を打ち出した岸田首相の構想をそのまま実現する財源の当てもない。いずれも政権の命運がかかる重大課題である。

 これらの難題があることを理解していれば、予算編成の大詰めの段階でなんの準備もなく突然トリガー条項凍結解除の話を持ち込むことなどあり得ないというのは誰でもわかる話だ。

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トリガー条項凍結解除は、初めから無理だった?