そうなれば、岸田首相の力を見せつけたということになり、党内はもちろん、国民の見る目も変わるのではないか。
妄想はさらにこんな奇策に至り着く。
年末の予算編成では与党内の反対を押し切り、自公国で予算案にトリガー凍結解除に備えた予備費を計上しておき(名目はいろいろありうるが)、そのための法律改正案(東日本大震災からの復興財源を確保するため、トリガー凍結のための臨時措置法が制定されているので、トリガー凍結をやめて発動するためには、この臨時措置法を改正する必要がある)とともに来年の通常国会で審議して、あえて国会での野党との対決を演出するシナリオだ。
野党が腰砕けになれば、岸田首相の求心力は回復し、逆に野党が形だけでも強硬な反対姿勢を示せば、最後は、強行採決を連発して予算と法案を立て続けに成立させ、その勢いで、来春4月以降に衆議院の解散総選挙に持ち込む。この税制改正が良かったのかどうかについて後出しで国民に信を問うのだ。採決前に信を問うのが王道だが、そうすると予算成立が遅れて、国民経済に悪影響が及ぶことを理由にすれば、後出し解散の言い訳にはなるだろう。
ただし、自民党内で、こうしたシナリオが理解されるかどうかは全く未知数だ。
ここまでは荒唐無稽と言われかねない「たられば」の話ばかりだったが、自民党税調の最終決定は12月中旬だ。前述した通り、来年度予算の前提となる税制改正なので、予算編成の前にどうしても決着する必要がある。仮にここをトリガー発動するかどうかは玉虫色のままで乗り切ったとしても、来年の通常国会の24年度予算案審議の段階でも検討中でトリガー凍結解除の可能性を否定しない一方で、解除の場合の歳入欠陥への備えもなしというのでは、あまりに無責任ということで、予算案審議は難航するのは「確実」だ。
年末までの税制改正と予算案編成という第一ハードルの後に通常国会での予算案審議という高い壁。それを逆手に取った解散総選挙という展開が単なる妄想と言えるのか。