ガソリンスタンドなどの反対も侮れない。トリガー条項を発動した後などに個別に還付や納税の面倒な手続きをする負担が増えることと、税率の上げ下げがあるたびに、価格急変による駆け込み需要や反動減などが生じて対応が難しいことからだ。ガソリンスタンド事業者は自民党の大事な票田なので、業界と族議員が反対することになる。
さらに、ガソリン税の対象はガソリンと軽油なので、トリガー条項を発動しても重油や灯油の値下げにはつながらない。一方、来年4月末まで続く補助金の方は重油・灯油も対象となるため、不公平感が出て、一部の業界とその族議員及び消費者の反発が予想される。
もう一つ全く別の観点からの反対もある。
ガソリン価格を下げればガソリンの消費が増え、脱炭素に完全に逆行するということだ。これはZ世代などに強く響くテーマなので、自民党としても軽んじるわけにはいかない。
こうして見ると、トリガー条項凍結解除を年末の予算編成に盛り込むことは、そもそも初めから無理だったとしか言いようがない。
と、ここまで書いたところで、30日夕方になって、自公国3党の協議結果の速報が入ってきた。それによると、トリガー条項凍結解除をやるかやらないかも含めて3党で真摯な協議をすること、仮に凍結を解除した場合の制度設計などについて実務者で協議を進めることと、年末の税制改正に向けてはトリガー条項を追加の議題とせず3党で協議中であることを書き込む方針を確認したという(日テレNEWS)。
予想通りの大幅トーンダウンだ。だが、これではただの先送りに過ぎない。岸田首相は、いったいどのようにこの難題を処理するつもりなのだろうか。これがどれほどの爆弾になりうるのかを理解しているのか。鈍感力などという冗談では済まない話だ。
なぜなら、岸田内閣の支持率は急落しており、それを受けて自民党の支持率も下がっていることで、党内には岸田降ろしの動きが強まっているからだ。
実は、反岸田の勢力から見れば、トリガー条項問題を岸田降ろしに使おうと思えば、かなり有効に使える。