前述の報道では、年末は玉虫色で逃げ切る構えのようだが、それでさえハードルは高い。万一、トリガー条項凍結解除を「検討する」ということさえ自民党の税調が拒否したら、自民党内で岸田不信任を突きつけられたのと同じ。岸田降ろしに一気に火がつく可能性がある。
いくら玉虫色の解決を狙うと言っても、全く何も決まっていないで通すことができるのかもかなり怪しい。なぜなら、トリガー条項をどうするのかが決まらないと、来年度予算の歳入のうち1.5兆円分がどうなるか決まらないため、予算を組むことができなくなるからだ。検討するということは、凍結解除する可能性があるということを否定できない。となれば、その場合の財源はどうするのかと聞かれると立ち往生ということになる。
ギリギリ考えられるのは、検討中で押し通し、正式に実施する場合は予備費で対応すると答えるくらいしかないのではないか。仮に年末の与党内の議論は切り抜けても、そんなおかしな政策・予算は国会で袋叩きになるだろう。
「増税メガネ」対策と言われて支持率低下を招いた所得減税ですら、まだ自民党税調の結論が出ていない。
万一、所得減税はもちろんトリガー条項の検討さえもが首相の指示通りにならないとなれば、岸田首相の退陣は即刻秒読みに入ることになってしまう。
それでもこんな愚策を打ち出すのはなぜかと頭を捻っていると、実は、これは岸田首相の起死回生の一打なのではないかという妄想が浮かんできた。
それは、党内で反対が強まり、前に進むことができなくなったら、国民のための大きな税制改正に反対する抵抗勢力がいると言って、それを理由に衆議院解散に踏み切るぞという姿勢を見せるというシナリオだ。
所得減税もトリガー条項凍結解除も、そのこと自体に反対する国民は少ないのが岸田首相の強みだ。
そういう脅しをかければ、こんなに支持率が低い中での解散などとんでもないということで、自民党側が折れて、最終的にはトリガー条項凍結解除になるかもしれない。