「ナタデココは比較的古くから研究や開発が進んできました。国内外のメーカーによって、スピーカーの音響振動板や人工血管、紫外線カット材などにすでに使われています。表示デバイスなど先端材料に使う研究もなされてきました」

 田島さんは今、ナタ菌と同じ酢酸菌を用いてつくるセルロースの製造方法や、その応用技術の研究を手がけている。

「私たちの場合はココナツウォーターではなく、てん菜が原料の砂糖の製造時に出る副産物『糖蜜』を使います。大量に生産できるようにするため、培養の方法も異なります。でも私たちが研究する素材もナタデココも、もともと食べられる原料なので安全性は高い。我々の素材も食品や樹脂の補強材としてすでに一部で実用化されており、将来は医療分野などへの応用も目指しています」

 1990年代には目新しい食品が相次いで登場し、次々と消えていった。そんな中でナタデココは、ほかの商品や食材とは一味違う面を見せている。

(AERAdot.編集部・池田正史)
 

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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