実現させたのは、競争相手だったイスラエル企業のカラーの最先端スキャナー(画像の読取入力装置)の輸入販売だ。スキャナーは自社の主力製品、技術者や営業部隊が騒いだ。でも、客のニーズはそこにあり、自社に最適の製品はない。そう説いて「とにかくやってみよう」というところへ、こぎつける。売り出すと大ヒット。自社も、同様の製品をつくり始めた。

 2014年4月に社長就任。同10月に持ち株会社へ移行し、社名をSCREENホールディングスへ変えた。主力事業となった半導体製造装置の分野は、06年から社内カンパニーの責任者を務め、精通している。社長兼CEO、会長となって、この6月に代表権を外した。

 実務の執行から離れて、気がかりなのが、世界で築いてきた人脈の継承だ。「ほかの人がやっていないことをやる」には、米国などで築いた人脈が役立った。提携先だけでなく、競争相手でも一度つながりを持つと、連絡をとり続ける。いまも各方面から情報を集め、技術動向をつかんでいる。後継者がいないと、事業は広がっていかない。

 だから、社長時代から事業部長級に「どんどん出ていって、人脈をつくれ」と言い続けてきた。経営を監督する側の会長になっても、この檄は、やめるわけにいかない。(ジャーナリスト・街風隆雄)

AERA 2023年12月4日号

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