AERAの将棋連載「棋承転結」では、当代を代表する人気棋士らが月替わりで登場します。毎回一つのテーマについて語ってもらい、棋士たちの発想の秘密や思考法のヒントを探ります。32人目は、船戸陽子女流三段です。AERA 2023年11月27日号に掲載したインタビューのテーマは「将棋以外の楽しみ」。
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船戸の美的センスはワインバーの内装にも表れている。
「もともと車庫だったところを自分でデザインして、フルリノベーションしました」
中学の頃はよく絵を描いていた。いまでも美術館や展覧会によく足を運ぶ。
「いま都内でやってるモネ展は混んでるそうなので、まずはゴッホ展とキュビスム展に行こうと思ってます。あとイヴ・サンローラン展も」
ここ15年ぐらいは日本画をよく見ていた。
「新しい現代作家さんから、伊藤若冲、歌川国芳とか、いろいろです。円山応挙の『仔犬図』がデザインされたトートバッグを持ってたら、島井さん(咲緒里女流二段)から『かわいい! それアザラシ?』って言われて(笑)。島井さんも最近、浮世絵がマイブームだそうなんですけど」
大阪に住んでいた頃は、陶芸にも打ち込んだ。
「時間もあったので、ずっと土を捏ねて器(うつわ)を作ってました。それがけっこう売れたんです(笑)。硝子も含めて、器全般は本当に好きで。古今東西、ビビッてくるのがあれば時代も国も関係なく。絵画の審美眼というか目利きは母に学んだはずなんですが、器は誰からも影響を受けてないし、学んでないので、なんでこんなに自分が器好きなのかわかんないんです。陶磁器は、皿とか茶器に目がないです。蚤の市とか骨董市とかに行くと、延々と見ちゃうから危なくて」
船戸は漫画にも造詣が深い。おすすめは?
「本をよく読む方には『宝石の国』(市川春子作)です。アニメ化もされてるんですけど、将棋でいえば駒組みぐらいで終わっていて。そこからえらいことが始まるので、ぜひ原作を読んでほしい。歴史が好きな方には『天幕のジャードゥーガル』(トマトスープ作)。主人公の女の子が聡明でスイスイいけます。あとは『ゴールデンカムイ』(野田サトル作)もすごくいい」