セ・リーグの選手でこのテーマで名前を挙げたいのはやはり中村奨成(広島)になるだろう。高校3年夏に出場した甲子園で大会新記録となる6本塁打を放ち、ドラフト1位で地元の広島に入団。プロ入り後はなかなか結果を残すことができなかったものの、4年目の2021年には一軍で初ホームランを放ち、今年も怪我で出遅れながら二軍では3割を超える打率を残すなど打撃については徐々に持ち味を発揮している。
チームも1学年上の坂倉将吾を正捕手として起用する方針を固めており、控えにもベテランの会沢翼、磯村嘉孝が控えており、守備に定評のある石原貴規もいる状況を考えると捕手として中村が一軍に定着するのは難しいように見える。再三グラウンド外での話題に足を引っ張られている感は否めず、現役ドラフトの対象となっているという噂もあるが、打撃に関しては捨てがたいものがあるだけにここからの奮起に期待したい。
今年のルーキーでありながら、打撃に大きな魅力を感じる捕手として挙げたいのが吉田賢吾(ソフトバンク)だ。桐蔭横浜大ではレギュラーに定着した2年秋から5シーズン連続で打率.350以上をマーク。3年秋以降の3シーズンで14本塁打を積み重ねるなど、神奈川大学リーグでは圧倒的な成績を残している。ルーキーイヤーの今シーズンは右肘の故障で出遅れたものの、夏場以降は二軍のレギュラーに定着。32試合の出場で打率.310をマークし、OPSも8割を超える数字を残した。
スイングに柔らかさがあり、広角に打ち分ける上手さとパワーを兼ね備えた打撃は既に二軍では上位のレベルにある。ソフトバンクは甲斐拓也、嶺井博希の2人で一軍の出場機会の大半を占めており、それに続く選手も谷川原健太、海野隆司などがいるため、なかなか若手捕手の入り込む余地はない。また打線を見ると左打者が多く、右でパンチ力のある若手は非常に貴重である。それを考えても、来シーズンは捕手以外のポジションにも挑戦して、持ち味の打撃をさらに伸ばすことを検討しても良さそうだ。