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「天国では、だれがいちばん偉いのだろう?」と弟子たちが議論をしていたところ、イエス・キリストは、近くにいた幼い子供を示し「この子のように自分を低くする者が、天国でいちばん偉い」と言った。その時の子供・イグナティオスは、使徒ヨハネの弟子となり45歳で司教となったが、皇帝から強要されたローマ神への礼拝を拒否したことで死刑を言い渡されてしまう。彼は猛獣に噛み殺されると決まった時、「キリストの麦となる!」と大喜びした。清涼院流水氏の新著『どろどろの聖人伝』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し、紹介する。

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 イエス・キリストが各地で福音宣教していた頃、弟子たちが「天国では、だれがいちばん偉いのだろう?」という議論をしていたことがありました。その時、イエスは、たまたま近くにいた幼い子供を呼ぶと、その子を弟子たちに示しました。

「はっきり言っておく。この子供のように純粋で謙虚にならないと、あなたたちは天国に入れない。この子のように自分を低くする者が、天国でいちばん偉い」

 その時、イエスに呼ばれた子供の名は、イグナティオス(イグナチオとも表記されます)。彼は成長して使徒ヨハネの弟子となり、西暦69年に45歳でアンティオキア教会の司教となり、以後、同教会を38年にわたり指導しました。

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猛獣のエサにされると決まり大喜び