サンタクロースは、4世紀前半、トルコ南西部の教会で司教を務めていたニコラウスという人物が元となっている。裕福で、莫大な財産をもっていたニコラウスは、貧しい隣人の家に金塊を投げ入れた元祖「お金配りおじさん」だった。クリスマスと並んで日本人でも広く知られているのはバレンタインデーだが、こちらにも元になったイタリア人司祭がいた。清涼院流水氏の新著『どろどろの聖人伝』(朝日新書)では、キリスト教国で親しまれている聖人伝が書かれている。同著から一部を抜粋、再編集し、“サンタクロース”と“ヴァレンタイン”について紹介する。
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クリスマスの夜に贈り物を届けてくれるサンタクロースは子供たちのヒーローで、かつて子供だった大人たちも「サンタさん」と聞いただけで不思議と心が温まる方も多いのではないでしょうか。サンタクロースの伝説の元になったのは、4世紀前半、現在のトルコ南西部にあたるミュラの教会で司教を務めていたニコラウスという人物です。
ニコラウスは裕福な家の出で、両親の莫大な財産を相続しました。ところが、彼の隣家は極貧の暮らしをしており、その家の娘たち3人が春を売って生活していることを知ったニコラウスは、夜中にその貧しい隣人の家に忍び寄り、金塊を投げ入れました。家族は「神様からのお恵みだ!」と泣いて喜び、その金塊のおかげで長女は結婚できたのですが、残るふたりの娘は貧困家庭にとどまっていました。ニコラウスは次女と三女のためにも夜の隣家に金塊を投げ入れたので、三姉妹は全員がしあわせになりました。現代日本でSNSのフォロワーにお金をプレゼントする大富豪が「お金配りおじさん」と呼ばれたことがありますが、元祖「お金配りおじさん」は、このニコラウスです。